2023科学よもやま話/冬

ドングリがピンチ!?
1000億匹の大発生


花芽に虫こぶをつくるスダジイタマバエが大発生しており、ドングリがほとんど実らない状態が続いています。どのくらいの数のタマバエがいるのかを三宅島で調査したところ、この島だけで1,000億匹以上と推定されました。スダジイタマバエは、九州や南西諸島にも生息しています。遺伝子解析の結果、伊豆諸島のタマバエは、比較的最近になって南西諸島から侵入したものと考えられました。また、九州や南西諸島では、タマバエの天敵である寄生蜂の幼虫が虫こぶの中でしばしば確認され、タマバエの密度を低く抑えているようですが、伊豆諸島では寄生蜂が見られません。この天敵の不在が、タマバエの大発生の一因と考えられます。そして、長期にわたるドングリの不作は、それを利用する様々な生き物へも悪影響を及ぼすことが懸念されます。
私は毎年、冬になるとドングリの実り具合やタマバエの虫こぶの状況を確認するために伊豆地方に赴きますが、スダジイタマバエの生息域は北部の島々へと徐々に拡大し、2022年には伊豆半島でも初めて虫こぶが確認されました。今後、本州でスダジイタマバエがどのように広がり、生態系にどんな影響を及ぼすのか注視したいと思っています。

執筆:徳田誠(佐賀大学農学部 生物資源科学科)

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2020年秋    シリーズ<有明海の生きもの2>
2020年冬    シリーズ<有明海の生きもの3>
2021年夏    シリーズ<夏に消える虫>
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2022年 冬   シリーズ<星のかたちは?>
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2022年 秋   シリーズ<シチメンソウ>
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2023年 夏  シリーズ<子どもにエサを運ぶ虫>
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2023年 冬  シリーズ<ドングリがピンチ!?1000億匹の大発生>