煮干しの解剖に挑戦しよう

煮干しの解剖に挑戦しよう

「煮干し」はお味噌汁のだしなどに使うもので、小魚を煮て干したものです。乾燥してはいますが、体の中のつくりはきちんと残っているので、解剖して観察しましょう。

■用意するもの
〇カタクチイワシの煮干し(8cm以上のとにかく大きなものがおすすめ)
〇印刷物 (標本作成用の台紙実物写真のシート
〇ピンセット又はつまようじ 〇A4~B4サイズの白い紙
〇セロテープまたは木工用ボンド 〇虫メガネ(100円均一にもあります)

■からだ全体を観察しよう
白い紙の上に煮干しを置いてからだ全体を観察しよう

体の色
それぞれの頭・腹・背中・尾の色に違いはあるだろうか?
ひれ
加工の途中でほとんどが無くなってしまいますがいくつかの煮干しを探すと小さく残ったひれを探すことができます。
うろこ
らきら光るものはうろこです。体全体についていたものの一部が残っていることがあります。魚の成長とともに大きくなる鱗(うろこ)は、ルーペで見てみると年輪状の模様があることが分かります。


■頭部を観察・解剖しよう
全体を観察したあとに、2つに割った頭の内側を見ていきます。1つずつ丁寧に観察・解剖をしていきましょう。ピンセットや爪楊枝を使って丁寧に剥がし、剥がした部位は、貼り付け用台紙に貼っていきます。

見つける部位
〇水晶体 〇網膜 〇脳 〇耳石 〇えら 〇さいは 〇えらぶた
①解剖する前に観察しよう

外側からの観察でもいろいろなことが分かります。

②頭部を解剖しよう
1.手で頭と胴体を分けます。
※気を付けよう
胴体との境目に黒色で三角形をしたものがあり、頭と胴体を外すときに取れることがあります。これは心臓です。無くさないように残しておきましょう。

2.頭を2つに割ります。
頭を上から見ると角張って平らなところがあります。そこに爪をあてて、開くように頭を2つに割ります。(角張って平らな部分のうしろあたり(尾側)は頭蓋骨です)

3.頭全体を観察しよう

4.部位ごとに詳しくみていこう
■頭・眼
水晶体

白い玉です。生きているときは透明ですが熱を加えると白くなります。

網膜
目玉が入っているくぼみに張り付いています。黒色です。解剖の時は、目の裏側をみるとわかりやすいです。

メモ
生きている魚の目が黒く見えるのは網膜の色が透明の水晶体を通して見えているからです。網膜と目の神経と脳はつながっています。


頭蓋骨の中に,うす茶色のやわらかい脳がはいっています。左右どちらかにくっついているので,見つけたらそっと爪楊枝などで取り出してみましょう。

しっぽのようになっているところが延髄です。ここから背骨に沿って走る脊髄という神経の束につながります。

    チャレンジ!耳石を探そう(難易度☆☆☆☆)
頭蓋骨の近くに、1㎜くらいの白い米粒の ような形をしものがあったら、これは耳石(じせき)です。顕微鏡で見ると輪のような模様が見えます。耳石は成長とともに大きくなり、1日に1本輪のような模様ができるのでこれを見ると魚の年齢を知ることができます。

■口とえらの周辺
水は、「さいは」と「えら」を順に通り抜けて「えらぶた」から外へ出て行きます。このとき、魚は、さいはにひっかかったえさだけを飲み込みます。

えら
赤茶色のくしのようなひだが重なっているようにみえます。えらを海水が通り抜けるときに、海水中の酸素を取り入れ、体内の二酸化炭素などを排出します。煮干しになる前は、4枚のえらが左右対になって重なっています。

さいは(鰓耙)

えらは弓のような形の骨についています。えらの反対側にある白いくしの歯が並んだようなものがさいはです。

えらぶた
生きているときは開いたり閉じたりしていた部位です。

■胴体を観察・解剖しよう

見つける部位
☆骨、筋肉、
☆☆☆卵巣、精巣,
消化管の各部位( 食道☆,胃☆,腸☆☆☆(幽門垂☆☆☆☆をふくむ))
肝臓☆,心臓☆,血管☆☆☆,腎臓☆☆☆☆
※星が多いほど難易度が高くなります

1.胴体を背開きにしよう

2.胴体の全体を観察しよう
いろいろな内臓の器官がすべて重なり合ってはいっています。
血液が多いところは黒い色になっています。生魚のときは、食道・胃・十二指腸・腸・肛門といった消化管はつながっていますが、煮干しの場合は、まとめて取り出すことはできません。

3.内臓を解剖しよう
肝臓

一番目に付く大きな黒いかたまりが肝臓です。

 

心臓
肝臓より頭に近いところ、のどのとがったあたりに心臓があります。肝臓とそっくりの黒い色で、ピラミッドのような形です。一心房一心室。尾がわに心房、頭側に心室という順に斜めに並んでくっついていてこのように見えているそうです。


肝臓につつまれるようにキャラメルのような色、うすい茶色の胃がはいっています。見えないときは、黒い肝臓のかたまりを割ると中にうす茶色の袋のようなものがあらわれます。これが胃です。


腹びれの付け根の近くに肛門があります。腸壁は見分けることはできませんが、使った煮干しによっては腸の形に白っぽいひも状のいわば、「糞のもと」が残っていることもあります。

腎臓
黒っぽいかたまりが胴体の上のほうの背骨の内側にあります。

卵巣・精巣

両方とも内臓をはさむように2つ潰れたように張り付いていています。卵巣(たまご)はタラコのような形で赤茶色、精巣(しらこ)は薄茶色です。

 

4.骨や筋肉、神経を解剖しよう

背骨

太くて短い骨がたくさん首から尾びれの根本までつながっています。

血管

背骨にそって尾までつながって黒っぽい筋のように見えます。

神経
背骨の背側にそって良く見ると、白い糸のような脊髄神経が見えるかもしれません。見えないときは、取り出した背骨を軽く折って引っ張る(カニの脚の身を食べるときの要領)と神経が抜けて出てくることもあります。

筋肉
私たちが食べる魚の身と呼ぶところは筋肉です。裂いてみると細長い繊維状のものが集まってできていることがわかります。

■調べてみよう
①今回解剖をしたカタクチイワシと人間の体の構造を比べてみよう。
②それぞれの部位は動物にとってどんな役割があるのだろうか。

資料提供・協力
☆小林眞理子さん(煮干しの解剖資料室)☆
掲載した写真、イラストはすべて「煮干しの解剖資料室」の小林眞理子さんよりご提供ご協力を頂きました。
引用資料:
ホームページ 煮干しの解剖資料室 https://niboshinokaibou.com
書籍     煮干しの解剖教室(仮説社)
(もっと詳しく知りたい方は、上記の資料をご覧ください。)

☆中島由晶さん(さが科学少年団)☆
新型コロナウイルスの影響により中止した科学教室「煮干しの解剖に挑戦しよう」の講師を担当して頂く予定でした。今回のページ作成にあたり情報をご提供頂きました。
提供資料:  さが科学少年団/例会報告/第287回「煮干しの解剖」 

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