2021年おもしろ自然観察/夏

【お天気教室】雲は色と光の魔術師

   太陽のまわりの薄雲に、光の輪が見えることがあります。暈(かさ)と呼びます。まれに、この暈の外側に虹のような色が付いたり(写真左下)、太陽の左右に明るく光る部分(写真右下)が現れることがあります。それぞれ「アーク」「幻日(げんじつ)」と呼びます。アークには「環天頂」など現れる場所の名前が付きます。
このときの雲は、1㎜の10~20分の1くらいの六角形をした薄い氷の粒(結晶)からできています。これらが、プリズムと同じ働きをして、太陽の光を色分けしているのです。虹と似ています(左下図) 。

   虹では、雨粒がプリズムの働きだけでなく、鏡の役割もしています。ですから、太陽を背にした方向にある雨粒から光が来ています。雨粒が大きく数が多いほど、虹は明るく、くっきりとします。

アークや幻日の場合、太陽の光は、氷でできた雲粒によって色ごとに特定の方向に曲げられるだけで、反射はしません。このため、太陽の方向に対し、アークは角度46度、幻日は22度離れた場所に現れます。この角度に見えるためには、雲が特定の高さと場所に現れる必要があります。さらに、雲を作る氷の粒の形・大きさ・数にも左右されます。珍しい現象なのは、このような理由です。

執筆:高瀬邦夫
(佐賀天文協会、元・佐賀地方気象台長)

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