2022科学よもやま話/秋

  シチメンソウ

有明海には日本でここだけという生き物がたくさんいます。有名なムツゴロウやワラスボの他、エツ、ヤマノカミ、ハゼクチ、アリアケヒメシラウオなどがそうです。植物で言うとシチメンソウが有明海の干潟だけに生育しています。
諫早湾にはかつてシチメンソウの大群落がありましたが、干拓された後は佐賀市の東与賀海岸が日本最大です。海岸の清掃や種まきなど地元の団体が保全活動を行っていて、干潟が真っ赤に色づく11月上旬にはシチメンソウ祭りも開催されています。このシチメンソウが2018年にほぼすべて立ち枯れを起こしてしまいました。その後少しずつ復活してきていて、今年は状態が良い紅葉が見られそうです。しかし心配なのは、立ち枯れの原因がまだ分かっていないうえ、その後も大なり小なり立ち枯れ被害が発生していることです。以前は鹿島や芦刈の海岸にも群落がありましたが今はありません。現在は佐賀市に中程度の群落が数カ所あるだけなので、東与賀海岸だけでなく、有明海全体で保全できるようにしたいものです。

執筆:上赤博文(佐賀自然史研究会)

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2020年夏    シリーズ<有明海の生きもの1>
2020年秋    シリーズ<有明海の生きもの2>
2020年冬    シリーズ<有明海の生きもの3>
2021年夏    シリーズ<夏に消える虫>
2021年秋    シリーズ<「ひっつき虫」とはどんな虫?>
2022年 冬   シリーズ<星のかたちは?>
2022年 夏   シリーズ<オオキツネのカミソリ>
2022年 秋   シリーズ<シチメンソウ>