2025 冬/科学よもやま話

毒とくすり


  秋、天山頂上付近の草原に青紫色のトリカブト(正式の名前はタンナトリカブト)の花が咲いています。昔、宮中の人たちが頭につけていた帽子に似ていることからその名前があります。全草にアコニチンという有毒成分を含んでいて、特に根(塊根)の毒の強さは植物の中では最強とされています。あやまって食べると1時間以内に舌や手足のしびれ、呼吸困難や筋肉のけいれんを起こし、死に至ることもあります。アイヌの人たちは古くからこの根のエキスを矢じりに塗って熊を射止めたと言われています。
 一方、中国では「毒もまたくすりなり」といったことわざがあります。中国人は2000年以上昔からこのトリカブトの根をくすりとして使用してきました。少量では心臓や腎臓など内臓の働きが良くなり、元気が出ることから、高齢者向けのくすりとして利用されています。もっとも、それ以前に、薬としての量を決めるためには多くの人が亡くなったと想像されます。
 トリカブトの根は日本でも多くの漢方薬に使われています。もちろん、使用する場合には加熱あるいは塩漬けをして毒の量を減らし、最後にアコニチンの量を測定した上で用いられています。

執筆:野中源一郎(野中烏犀圓当主 / 薬学博士)

..科学よもやま話のアーカイブ…
2020年夏    シリーズ<有明海の生きもの1>
2020年秋    シリーズ<有明海の生きもの2>
2020年冬    シリーズ<有明海の生きもの3>
2021年夏    <夏に消える虫>
2021年秋    <「ひっつき虫」とはどんな虫?>
2022年 冬   <星のかたちは?>
2022年 夏   <オオキツネのカミソリ>
2022年 秋   <シチメンソウ>
2022年 冬  <ヤブツバキ>
2023年 夏  <子どもにエサを運ぶ虫>
2023年 秋  <赤トンボがいない秋>
2023年 冬  <ドングリがピンチ!?1000億匹の大発生>
2024年 夏  <『東よか干潟』を通過して行く鳥が凄い!>
2024年 秋  <ツバメのお宿は?>
2024年 冬  <スズメのお宿は?>
2025年 夏  <果物がくすり!?>
2025年 秋  <お茶はくすり?>
2025年 冬  <毒とくすり>

TOP