2023科学よもやま話/秋

赤トンボがいない秋

秋といえば、赤トンボを思い浮かべる方も多いでしょう。赤トンボとは、トンボの仲間の中でもナツアカネやアキアカネなど、アカネ属に含まれる仲間のことを指します。2000年頃から、全国的にアカネ属のトンボの生息数の減少が報告されています。その原因として、農地の整備や水田で使用される農薬の影響が指摘されています。佐賀平野の同じ場所で、2000年と2015〜16年にトンボの生息数を調査したところ、赤トンボの仲間のマユタテアカネの生息数が10分の1に減少していました。また、佐賀県の山間部ではかつて、ミヤマアカネは一番よく見られる赤トンボでしたが、1980年代から数が減り始め、県内では現在、佐賀市富士町のごく限られた場所でしか生息が確認されていません。近年、地元の小学生や有志の皆さんが、ミヤマアカネの生息場所を守る活動をされています。佐賀平野では最近、赤トンボに優しい農薬が使われ始めています。またかつてのように、たくさんの赤トンボが飛び交う秋の風景が見られるようになることを期待しています。
執筆:徳田誠(佐賀大学農学部 生物資源科学科)

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